工業炉の種類についての基本情報をまとめています。「燃焼炉」と「電気炉」に分けられる工業炉は、操業方式などによってより細かく分類が可能です。
熱処理炉を交換するにあたって、まずは工業炉全体の種類や特徴についても押さえておくと良いでしょう。
「工業炉」は、材料を目的の温度で溶解・加熱・熱処理する装置の総称。加熱により、材料が持つ物理的性質や化学的性質、機械的性質などを変化させ、目的に合った製品の加工が可能になります。
工業炉には多様なラインナップがありますが、大別すると「燃焼炉」と「電気炉」の2種類に分かれます。「燃焼炉」は石油やガスなどを熱源とする設備、「電気炉」は電気エネルギーを熱源とするものです。
工業炉は、「バッチ式」や「連続式」など操業方式でも詳細に分類されています。加えて、材料を溶かす「溶解炉」をはじめ、金属加工において鋼材に加工する前段階で熱を加える「加熱炉」、金属やセラミックスなどに強度やじん性、耐性などを持たせる「熱処理炉」など、用途や目的別に応じてさまざまな種類があります。
種類によって使い方はもちろん、耐用年数もそれぞれに変わってきますので、購入したメーカーにメンテナンスや交換についてのアドバイスを受けることがおすすめです。
上記のように、工業炉は熱源や操業方式のほか目的や用途によっても細かく分類されています。企業によって呼称が異なる場合があるので、どんな目的で使うのか、対象物に対して得られる効果や対応している温度なども確認しておくのがおすすめです。工業炉の中でも代表的な炉の種類を載せているので、見ていきましょう。
熱処理炉とは、鋼などの金属を一定の温度以上に加熱したあと、冷却することで金属の組織や性質を改善・硬化するための炉です。主に、焼入れ炉、焼戻し炉、焼なまし(焼鈍)炉、焼ならし(焼準)炉などの種類があります。
また、焼入れの際の処理方法として全体熱処理や表面熱処理があり、それぞれに適した炉が製造されています。全体・表面熱処理の加工ができる炉を「熱処理炉」と呼ぶのが一般的です。熱処理炉には、浸炭炉や窒化炉、真空炉なども分類され、処理品の加工目的に応じて使い分けられています。
乾燥炉とは、様々な熱源を使用し、水分・溶剤・粉体などさまざまな物の乾燥・焼付を行う装置です。熱源や加熱方式、焼付条件、構造形状、搬送、付帯装置等を目的に合わせて選択します。
溶解とは2つ以上の物質(主に金属)が溶けて一体化することです。つまり、2つ以上の素材を高熱で溶かして混ぜるための炉を溶解炉と呼びます。例えば、アルミニウム原料を溶解する「アルミ溶解炉」、鉄鉱石とコークス(石炭を蒸し焼きにしたもの)から銑鉄を生み出す「高炉」などが、溶解炉に当たります。
誘導炉は、電磁誘導を利用する電気炉の一種です。コイルに交流を流すとコイル内に起電力が誘起され、コイル内の導体中に渦電流が生じますが、この渦電流によるジュール熱を利用する電気炉のことを誘導炉といいます。高周波を用いる高周波炉および50~60ヘルツの商用周波数を利用する低周波炉があります。
焼成炉とは、粉末を金型に入れて成形・加熱して焼き固めることで一定の形状と強度を持たせる炉のことです。 主にセラミックや電池材料の製造時に使用されることが特徴です。 セラミックスなどの酸化物系の熱処理は「焼成炉」、金属粉末の熱処理は「焼結炉」と、焼き固める材料により名称が変わってきます。
工業炉の国内シェアは、金属用熱処理炉の数が最も多く24%を占めています。加熱方式では直火式・関節加熱式が約半数を占めており、誘導加熱式も18%存在しています。更新状況は、金属用熱処理炉(真空熱処理炉を含む)が最も多く、次いで乾燥炉、非鉄金属溶解炉が多くなっています。
非鉄金属とは鉄以外の成分を主成分とする金属を指し、アルミニウムや銅、チタン、マグネシウムなどが当てはまります。工業炉のシェアは扱う材料によって変わりますが、耐用年数については、工業炉そのものをじっくり点検することが必要です。シェアが少ない炉でも劣化具合を見極めて、適切な交換を行いましょう。
工業炉の種類は「燃焼炉」と「電気炉」に大別され、「バッチ式」や「連続式」といった操業方式によっても細かく分類されていることを押さえておきましょう。
工業炉は、少なくとも10年以上は使うことが一般的。万が一のトラブルに備え、メンテナンスやサポート体制が充実しているメーカーを選ぶことを推奨します。
このサイトでは、長く付き合える熱処理炉メーカーを紹介。さらに、トップページでは省エネになる熱処理炉の製造をしており、サポート体制も整っている熱処理炉メーカー3選を掲載しています。ぜひ、熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)