真空熱処理について
ここでは、熱処理の一種である真空熱処理について、仕組みや用途、メリット・デメリットを紹介します。
真空熱処理とは?
 
真空熱処理の用途
 
真空熱処理とは、熱処理炉内部を真空状態に保ち、材料と酸素の結合による酸化を防ぐ処理方法です。機械的性質の低下を抑え、光輝性を向上させ、素材の純度を維持することが可能。焼入れや焼戻しなど幅広い熱処理に対応でき、酸素の少ない雰囲気で処理を行うため、脱炭が起きにくいことが特徴です。
真空熱処理の仕組み
 
真空熱処理は、熱処理炉を低真空、中真空、高真空、超高真空の4段階に分類して処理を行います。真空炉に鋼材などを投入し、真空状態で加熱した後、ガス、油、水などを用いて冷却します。
真空熱処理の種類
 
真空熱処理には、次のような種類があります。
 
- 真空焼入れ:母材を必要な温度まで加熱してから急冷する
- 真空焼戻し:低温または高温で焼入れをしてから一定時間保持して徐々に冷却する
- 真空焼きなまし:母材を加熱して変化させ、一定時間加熱してから徐々に放冷する
- 真空焼ならし:変態点よりも高い温度で加熱してから一定時間保持して空冷する
- 真空脱脂:付着した油を沸点以上の温度下で加熱・蒸発させて除去する
- 真空ロウ付け:母材に溶かしたろう材を塗布して加熱し複数の部材を接合する
- 溶体化処理:金属材料を高温で溶かし、結晶の再配列や改質・機能向上を図る
いずれも真空状態で行うため、酸化や脱炭のリスクがなく機能の付与や向上が期待できる方法です。なお真空熱処理に使われる真空炉については、以下のページで紹介していますので、併せて参考にしてください。
真空炉についてチェック
真空熱処理のメリット・デメリット
 
真空熱処理のメリット
 
真空熱処理は、酸素のない状態を保つことで酸化や汚染を防ぎ、均一な処理を行えます。高品質な表面処理が可能で、酸化膜が存在しないため光輝性(光沢感)が向上。金属の酸化を防ぐため、材料がもつ長所を失わず、耐腐食性や耐摩耗性を高める効果があります。
真空熱処理のデメリット
 
真空熱処理には、真空をつくりだす装置や高温加熱に対応した設備が必要です。設備の導入にコストがかかり、操作を覚える手間などがデメリットになるでしょう。
真空状態の生成から処理完了までのプロセスが長く、納期が延びることがあります。あらかじめ処理にかかる期間を計算しておく必要があります。
真空熱処理以外にも
熱処理炉の基礎知識をチェックしよう
 
熱処理炉を真空状態にして加熱することで、金属材料の特性を損なわずに機械的性質や外観を改善できます。導入コストは高くなる場合がありますが、酸化や脱炭が発生しない点がメリットです。熱処理によって高い完成度に仕上げるためには、真空熱処理を検討してみてはいかがでしょうか。
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