窒化炉は鉄鋼製品を加熱し、鋼の表面から窒素原子を内部に拡散させて表面を強化させるための熱処理炉です。保温したアンモニアガス中に鋼材を放置すると、表面に鉄と窒素の化合物が形成されます。表面から製品の中心部に向けて窒素濃度の拡散層が生じ、表面が固くなるのが窒化処理です。
窒化炉は窒素の生成方法により、ガス窒化、ガス軟窒化、塩浴軟窒化などに分類されます。また、添加元素によって軟窒化や浸硫窒化などに分類されるケースもあります。
窒化炉の目的は、対象物の表面を強化させることです。鋼の表面に窒素を浸透させるだけで硬化できる窒化炉は、焼入れや焼戻しの手間がかからないうえに、形状の変形が非常に少ないため、主に精密部品の製造で使用されます。
ただし、窒化層は浸炭焼き入れ層と比較して0.1mm程度と薄く、大きな衝撃や面圧を受ける環境には適していません。焼入れ後に窒化処理を施せば、焼入れや窒化だけでは得られない硬度や耐衝撃性を持つ表面を作り出すことも可能です。
窒化には、軟窒化もあります。軟窒化は、処理鋼材の表面で活性窒素と活性炭素を生成させる処理のことです。徐冷をすると軟窒化処理となり、浸炭窒化させた処理物を焼入れした場合は、浸炭窒化処理となります。
軟窒化には、耐摩耗性や疲労強度の高いガス軟窒化処理や処理時間が短く炭素鋼にも使えるプラズマ軟窒化処理、低温かつ短時間処理で生産性に優れた塩浴の3種類があります。
通常処理と2段ガス窒化処理に分けられるのがガス軟窒化。2段ガス窒化処理は、段階的に温度を上げていく処理方法です。
プラズマ窒化は、窒化性ガスを使用。減圧処理炉の中に、窒素、水素、メタンガスなどを入れて電圧を上げます。発生した放電現象により気体をプラズマ化させて作り出した窒素原子で窒化する方法です。
窒化炉は鉄鋼製品を加熱し、鋼の表面から窒素原子を内部に拡散させて表面を強化させる熱処理方法です。用いる窒素の生成方法によって、ガス窒化、ガス軟窒化、塩浴軟窒化などさまざまな方法があります。
対象物の表面を硬化させられるだけでなく、対象物の形状がほとんど変形しないため、精密部品の製造で多く使用されています。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)