二酸化炭素などの温室効果ガスを抑える目的の脱炭素社会は、日本のみならず世界中が目標に掲げている地球温暖化防止のための施策です。ここでは脱炭素社会についての基本情報をまとめているので、熱処理炉選定の参考にしてください。
脱炭素とは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることをいいます。脱炭素を実現した社会を「脱炭素社会」といい、120以上の国と地域が2050年までの実現に向けて取り組みを進めています。
脱炭素の取り組みでは、温室効果ガスの排出量から、植物への吸収量を引いて「実質ゼロ」を目標としています。工業炉から排出されるCO2を減らすことは地球温暖化防止にかかわる重要な仕事だといえるでしょう。
経済産業省が2023年2月にまとめた報告書によると、熱処理炉を含めた工業炉全体から排出されるCO2量は年間で1.5億t。国内全体の13.5%に上ります。
持続可能な社会を実現するためには、製造分野における熱プロセスの脱炭素化は早急の課題です。
しかし、野村総合研究所のインタビュー調査によると、工業炉の国内保有台数のうち省エネ型なのは24%の普及率でした。
今後、熱処理炉を買い替える際には省エネ型を検討してみるのがおすすめ。ランニングコストの削減に加え、CO2の排出を減らすことができるからです。
工業炉はガスなどの燃料を燃焼させて加熱する燃焼炉と、電気で加熱する電気炉に大別されます。電気炉は燃焼炉に比べてCO2の排出量を削減できるため、工業炉の世界市場において年々シェアを高めています。
CO2を排出せずに金属製品を迅速かつコンパクトに加熱できる電気炉は、脱炭素化を達成するための選択肢の1つ。温室効果ガスの排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルを達成するために、今後の世界ではますます電気炉への転換が進むと予想されます。
CO2の排出を抑制し、カーボンニュートラルの実現につながる電気炉への乗り換えは、作業効率が高いだけでなく社会貢献としても非常に重要です。ただ、事業者によっては、業種や敷地、予算などの理由からガス燃料炉を利用せざるを得ないケースがあることもまた事実。自社が電気に転換できるかわからない場合は、専門知識を持つメーカーに相談するのがおすすめです。
また、省エネ型の熱処理炉を新たに導入する場合、経済産業省が推進している省エネ補助金が受けられる可能性があります。併せて問い合わせしてみましょう。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)