焼き戻し炉は焼入れ後の鋼を再度加熱することによって、鋼の硬さを適度に調整しつつ、粘りや耐久性を向上させる熱処理方法です。焼入れで生成された組織のひずみなどをバランスが整ったマルテンサイト組織(※)にします。英語ではテンパリングと呼ばれ、JISの加工記号は「HT」です。
焼入れよって鋼は硬くなるものの、そのままの状態では脆く、割れや破損が起こりやすくなります。そこで焼き戻しを行うことで、鋼をより強靭に仕上げることができます。焼入れと焼き戻しは基本的にセットで行われ、硬さと耐久性を両立した製品が作られています。焼き戻しの方法は、低温焼もどしと高温焼もどしの2種類に分けられます。
焼き戻し炉の大きな目的は、鋼の硬度を下げて粘りを出すことです。焼割れを防止し、耐衝撃性や耐摩耗性を向上させるなど材質の改善のために行われます。
150~200度で行われる低温焼もどしは工具鋼の加工に適しており、製品の耐摩耗性を高め、割れを防止。高温焼もどしは鋼材の種類によって、400~650度の適切な温度で処理することで、低温焼き戻しよりも耐熱性や耐熱強度が上がります。
焼き戻しは、焼入れの後に必ず行う必要があります。そのため、焼き戻し炉は焼入れ炉と組み合わせて使われることがほとんどです。
加熱と冷却を交互に行う炉には、バッチ式や連続式の2種類があります。バッチ式とは、ベルトコンベアなどに製品を置き、加熱炉に入れて加熱と冷却を行っていく方式のこと。連続式の場合は、連続して加熱と冷却を行うことができるため、1つの製品の大量生産向きの炉を指しています。
焼き戻し炉は焼入れ後の鋼を再加熱し、硬さを調整し粘りや耐久性を向上させる熱処理方法です。焼入れによって硬化した鋼を再加熱することで、割れや破損を防ぎ、より強靭な製品を作り出します。焼き戻しの方法には低温焼もどしと高温焼もどしの2種類があり、工具鋼や機械構造用鋼などの加工に適しています。焼き戻し炉は、硬さと耐久性を両立した製品を作るうえで不可欠な処理です。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)