金属を熱の力で変化させる熱処理炉では、排出された熱エネルギーの回収と再利用による取り組みが進められています。ここでは、熱処理炉の排熱回収・再利用の内容や事例を紹介しています。
排熱エネルギーの回収は、脱炭素化と資源の有効利用につながります。熱処理炉の高温を活かし、排熱を循環させたり熱交換器を通じて他のエリアの予熱に使ったりと、再利用によって熱を活用する仕組みです。
熱処理炉は高温な環境をつくりだすために多くのエネルギー源を必要としますが、排熱回収・再利用によってエネルギー源の使いすぎを抑え、省エネ効率を高められます。
排熱回収と再利用のプロセスは、熱処理炉のメーカーごとに異なります。熱をどのように循環させるのか、再利用までの仕組みや構造も把握しなければなりません。
熱処理炉本体に加えて熱交換器などの製品が必要になる場合もあり、イニシャルコストがかかる点にも注意が必要です。
パナソニック ホールディングス株式会社では2017年に工業炉の排気熱エネルギーを再利用する循環システムを開発しました。排気の中に含まれる微粒子を集塵し、汚れを分離して浄化した排気を炉内に戻して再利用する仕組みです。
この方法によって、排熱エネルギーの回収効率75%に達し、炉内の汚れの低減や清掃時間の短縮にもつながりました。
三浦工業株式会社が2010年に表面処理銅板の製造会社で使用されている焼鈍設備に廃熱ボイラーを納入した事例です。溶融亜鉛めっきライン内にある焼鈍設備から出た燃焼排ガスの熱を蒸気として回収・再利用する流れを構築しました。
このプロセスにより、熱効率は58%から82%へ上昇。二酸化炭素の排出量も、年4,500トンの削減効果を得られました。
熱処理炉は1000度を超える高温になるものが多く、排熱自身も高温であることから、熱エネルギーとしての活用が期待されています。熱エネルギーの有効利用によるエネルギーコストの削減、脱炭素化に向けた取り組みとして注目されています。
当サイトでは、熱処理炉の基本事項や取り扱い上の注意点などを紹介しています。次のページもぜひ参考にしてください。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)