熱処理炉の種類を大別すると、バッチ式と連続式の2種類があります。それぞれどのような特徴を持っているのか解説します。
バッチ式とは、窯単位でまとめて加熱を行う方法をいいます。そのため、一度処理が終わったら、中身を入れ替えて次の分を処理していく形です。
バッチ式は毎回プロセス条件を変更して加熱が可能です。そのため、おもに多品種少量の過熱を行うのに向いています。
様々な熱処理で活用されている方法です。
また、中身を入れ替えるたびに装置のメンテナンスを行うことも可能です。このことから、熱処理をするにあたり、こまめなメンテナンスが必要になるようなケースにも向いているでしょう。
一方で、毎回中身を入れ替える手間が発生することもあり、大量生産を行うのには適していません。
バッチ式の中でもいろいろな種類があるのですが、特に一般的なのが箱型炉と呼ばれるものです。マッフル炉とも呼ばれるものであり、加熱炉が箱形をしています。
各種部品の焼なましのほか、焼ならし、焼入れ、焼戻しなどの用途で選択されることが多いです。他にもベル形炉、ピット形炉などの種類があり、用途に合わせて適したものが変わります。
連続式は、ベルトコンベアなどの上に加熱する製品を置き、時間をかけて製品が炉の中を移動しながら加熱されていく方法です。連続して処理できます。
連続式は、連続的に処理が可能であることから、大量生産に向いている方法です。
例えば、同じく1時間の熱処理が必要な製品の場合、連続式では連続して処理が可能です。一方で、バッチ式は1時間経った時点で中身の入れ替え作業やその他準備をしなければなりません。このことから、バッチ式と比べると高い生産性を持ちます。
主に、同一処理物を同じ条件で処理する場合に選ばれています。
また、製品の均一性を確保しやすくなるので、安定性を持って作りたい製品に向いている方法といえるでしょう。
連続式にはいくつかの種類があり、例えばトレイプッシャー式では炉の挿入端部分からプッシャーを使い、トレイを搬送します。
それから、ローラーハース式は、ローラーを回転させることによって処理物を搬送しながら熱処理していく方法です。他にも、メッシュベルト式やシェーカーハース式などの種類があります。
バッチ式と連続式の熱処理炉にはそれぞれどういった特徴があるのか紹介しました。
多品種少量にはバッチ式、同一処理物の大量生産には連続式が向いています。ただ、設備の初期費用は連続式の方が高いなどコスト面での違いもあるので、自社に合ったものを検討して選択しましょう。
以下のページでも熱処理炉の基本情報を詳しく紹介しているので、こちらもぜひチェックしてみてください。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)