焼入れ炉は金属加工方法の一つで、鋼を変態点以上まで加熱し、一定時間保持した後に急速に冷却する熱処理方法です。鋼を高温のオーステナイト(※1)の状態に加熱してから迅速に冷却し、マルテンサイト組織(※2)に変化させることを焼入れと言います。
「焼入れ」は英語ではハードニング(硬化)、クエンチング(急冷)、クエンチハードニング(急冷硬化)などと呼ばれています。JISの加工記号は「HQ」です。
焼入れでどのくらい鋼が硬くなるかは、鋼に含まれる炭素の量、および炭素以外の合金元素によって決まります。焼入れ性が高い鋼は冷却媒体を選ばずに硬化しますが、焼入れ性が低い鋼は水などで急速に冷却する必要があります。
焼入れ炉の目的は、鋼を硬化させることです。素材の組織が変化する温度である変態点を超えるまで鋼を加熱した後、急速に冷却することによって鋼の強度が増します。冷却の速度が遅くなると、マルテンサイトの生成量が減り、強度は上がりません。
このように冷却速度が肝となりますが、浸炭熱処理や浸炭窒化処理など処理方法を変えることで、強度や靭性を上げることも多くあります。機械構造用鋼や工具鋼は、焼入れ処理によって目的に応じた強度に加工されています。
焼入れ炉には、表面だけを焼入れに適した温度に熱しておき、活性炭素を拡散侵入させる、浸炭炉や真空浸炭炉、浸炭窒化炉などが分類されます。また、焼入れと焼き戻しは基本的にセットで行われています。
焼入れ炉は鋼を変態点以上に加熱した後に急冷する熱処理方法で、鋼を硬化させる一般的な手段です。焼入れ性が高い鋼は冷却媒体を選ばずに硬化し、焼入れ性が低い鋼は急速に冷却する必要があります。焼入れ炉には真空焼入れ、浸炭焼入れ、高周波焼入れ、窒化焼入れなどの種類があり、機械構造用鋼、工具鋼、精密部品などの加工に適しています。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)