熱処理炉を使用する上でよく検討したいのが、省エネに関することです。そこで、熱処理炉の省エネ対策について紹介します。
熱処理炉を導入する際は、省エネ対策に取り組んだ方が良いでしょう。省エネ対策が必要とされるのには以下のような理由があります。
熱処理炉は加熱装置であり、稼働させる過程で二酸化炭素が大量に排出されてしまいます。二酸化炭素は地球温暖化の大きな原因であるため、できる限り排出を抑えなければなりません。
また、石油や石炭など硫黄分が含まれる化石燃料が燃える際には環境汚染の原因となる硫黄酸化物などが作られてしまい、環境汚染を招いてしまいます。省エネ対策によって効率の良い形で熱処理炉が利用できるようになれば、これらの発生を抑え、環境負荷の低減が可能です。
省エネ対策ができると、少ない燃料やコストで効率よく熱処理炉を稼働させられるようになります。例えば、必要以上に高温設定をしている場合は温度を下げる、適切な運転時間を設定するなどの方法を実践すれば、熱処理に悪影響を与えることなくコストの削減につながります。
他にも、熱源をすべてガスにするのではなく、コストが抑えられる電気を併用するなどの方法が効果的です。
実際にどのような形で省エネ対策が取られているのでしょうか。ここでは、熱処理炉の省エネ対策事例を紹介します。
たくさんの燃料を必要とするものは、それだけコストがかかります。熱処理炉の燃料使用量の削減と工場の電力使用量の削減を行った事例です。熱処理炉入出口扉の密閉のほか、コンプレッサ吐出圧の低減、熱処理炉に蓄熱バーナーの導入などを行った結果、年間のコストが13.6%削減できました。
従来ガスを使っていた熱処理炉において、電気とガスを併用する新型のハイブリッド型の熱処理炉を導入した事例です。ガスと電気を併用することで、それぞれのデメリットをカバーし、いいとこ取りができました。従来と比較して約39%の省エネを達成しています。
電気とガスが適切に利用できるハイブリッド型の熱処理炉を開発して省エネにつなげた事例です。同時に少量生産ができるフレキシブルな生産ラインの構築や省エネ・省スペースも実現しました。従来システムと比較して59%の省エネルギー化に繋がっています。
熱処理炉を活用していく上で、省エネ対策はぜひとも取り組んでおきたいものです。自社ではどのような取り組みができるのか考えることも重要ではありますが、省エネ性能に優れている熱処理炉を選ぶことも欠かせません。導入する熱処理炉は慎重に検討しましょう。
以下のページではこれから熱処理炉を導入するにあたり、おさえておきたい基本情報を紹介しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)