熱処理炉には処理方法や目的に応じて、さまざまな種類が存在します。
ここでは熱処理炉を大きく7つに分類し、それぞれの特徴を紹介しています。熱処理炉にはどのような種類があるのか知りたい方はぜひチェックしてください。
焼入れ炉は、鋼を変態点(※1)以上に加熱し急冷することで硬化させる熱処理炉です。焼入れ炉には真空、浸炭、高周波、窒化などさまざまな種類があります。鋼品質の均一化、表面硬化、エネルギー省力、強度向上などを目的として機械構造用鋼や精密部品に用いられます。
焼き戻し炉は焼入れ後の鋼を再加熱しながら硬さを調整し、粘りや耐久性を向上させるための熱処理炉です。焼入れで硬くなった鋼がもろくなるのを防ぎ、割れや破損を予防。処理方法には低温焼もどしと高温焼もどしの2種類があり、工具鋼や機械構造用鋼などに役立ちます。
焼きなまし炉は鋼を軟化させ、組織を均一化する熱処理を行う炉です。拡散焼なまし、球状焼なまし、応力除去焼なましなど多くの方法があり、鋼材を軟化させて加工しやすくするのが主な目的です。鉄鋼材料全般、非鉄鋼材料全般、結晶粒が粗大化した熱間鍛造品や鋳鋼品などの分野で用いられます。
焼きならし炉は、鋼を変態点(※1)以上で加熱し自然冷却することで、鋼の強靭性を向上させるほか、残留応力(※2)を取り除く熱処理炉です。処理方法には普通焼ならし、二段焼ならし、二重焼ならし、等温焼ならしなどがあります。焼きならし炉は機械構造用鋼や低炭素鋼などの製品に用いられ、加工後のひずみやムラを防止します。
浸炭炉は低炭素鋼の表面に高炭素層を作る熱処理炉です。鋼の表面に高炭素層を形成し、内部を低炭素状態に保つことで、金属の強度と耐摩耗性を向上させます。浸炭炉にはガス浸炭、液体浸炭、真空浸炭、浸炭窒化など種類が豊富です。肌焼き鋼、低炭素鋼、快削鋼などの鋼材に使用されます。
真空状態の炉内で熱処理を行う炉を真空炉と言います。鋼材の酸化を防ぐほか、素材表面の光沢を維持させるのが大きなメリット。真空炉には一室型と多室型の2種類があり、主な加工対象は超硬工具用高級鋼、電子製品材料、自動車部品などです。
窒化炉は鉄鋼製品の表面を強化させるための熱処理炉です。窒化の生成方法によってガス窒化、ガス軟窒化、塩浴軟窒化などに分類されます。窒化炉は素材の形状変形が少ないため、主に精密部品の製造加工に利用されています。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)