熱処理炉の中には、ハイブリッド型と呼ばれるものがあります。ここでは、ハイブリッド型の熱処理炉とはどういったものなのか、どのような製品事例があるのか紹介します。
ハイブリッド型の熱処理炉とは、どういったものなのでしょうか。特徴や仕組みを紹介します。
ハイブリッドとは、異なるものを組み合わせたり掛け合わせたりすることをいいます。熱処理炉でハイブリッド型とされるものの多くは、2つの熱源を採用しているものが多いです。
また、熱源ではなく、ローラーハース方式やトレイプッシャー方式などの仕組みを組み合わせたものもあります。
電気とガスのように熱源を組み合わせたタイプのものは、工程毎に適した熱源を利用できるものが多いです。これにより、熱処理の工程に合った熱源を選択できるので、無駄を省いて省エネにつながります。
任意の熱源に切り替えて使えるものや、2つの熱源を併用するものもあります。
実際にハイブリッド型の熱処理炉にはどのようなものがあるのでしょうか。製品事例を紹介します。
株式会社ワイエイシイデンコーによる熱間鍛造、ビレット加熱などに活用できる加熱炉です。誘導加熱と遠赤外線加熱を用いたハイブリッド型の装置です。従来の製品と比較して省エネ効果が20%アップしました。また、CO2排気量も抑えられています。
中部電力株式会社と株式会社エコムが共同開発した超コンパクトモジュール型ハイブリッド熱処理炉です。熱源として電気とガスを採用し、これらの相互切替ができます。従来製品よりも7割以上コンパクトであり、かつ約6割の省エネを達成しました。
正英製作所が開発設計・製作を行った熱源ハイブリッド熱処理炉です。通常はガスが使用されることが多いアルミ鋳造熱処理の熱源に環境負荷の低い電気式の工程を部分的に導入しました。これにより、熱処理のエネルギー使用量を約39%削減できたほか、CO2排出量も抑えています。
中部電力株式会社とエコムが共同開発開発したハイブリッド熱処理炉です。熱源を高出力で急速に加熱可能なガスバーナと、高精度な温度制御ができる電気ヒータのハイブリッド形式にしました。また、循環ファンのインバータ制御も採用し、従来製品と比較して59%の省エネルギーを達成しています。
ハイブリッド型の熱処理炉は従来のものと比較すると省エネ性能に優れていることが多く、処理に関するコストを抑える効果を期待することもできます。 高性能な熱処理炉を導入したいと考えているのであれば、ハイブリッド型も検討してみると良いでしょう。
以下のページでも熱処理炉に関する情報を紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)