浸炭炉は、低炭素鋼の表面に高炭素の層を形成する熱処理方法です。低炭素鋼が高温になるとオーステナイト組織(※)に変化し、浸炭性ガスと接触することで、炭素が鋼の表面から内部へと浸透し拡散します。これにより、鋼の内部は低炭素状態を保ちつつ、高炭素の表面層を形成できます。
浸炭処理の後には、必ず焼入れを行ってください。
浸炭処理の方法には液体浸炭、ガス浸炭、真空浸炭、プラズマ浸炭などがあります。中でもガス浸炭を用いた処理が一般的です。鋼鉄を熱処理するためには、炉内の空気を排除してガスに置換する必要があります。このようなガスは雰囲気ガスと呼ばれ、雰囲気ガスで炉内の空気を置換した浸炭炉は雰囲気ガス炉といいます。雰囲気ガスの種類は次のとおりです。
金属疲労が発生すると鋼材の表面に亀裂が生じ、最終的には鋼材が壊れてしまう恐れがあります。浸炭炉の目的は、金属の表面層における炭素含有率を0.7%~0.9%に調整して焼入れを行うことによって、材料の組織をマルテンサイトに変化させ、硬度と引張強度を向上させることです。浸炭処理を施すことによって、金属の疲労強度と耐摩耗性が強化されます。
浸炭炉は種類が豊富です。炭素源はそれぞれの処理方法によって変わります。
ガス浸炭はメタノールや炭化水素ガスを、液体浸炭はシアン化ナトリウム溶融塩、真空浸炭はプラズマ浸炭の場合炭化水素ガスを、浸炭窒化処理の場合には炭化水素ガスとアンモニアを使います。
浸炭炉は低炭素鋼の表面に高炭素の層を形成する熱処理方法です。鋼の内部は低炭素状態を保ちつつ、高炭素の表面層を形成。金属の表面層における炭素含有率を調整し、材料の組織をマルテンサイトに変化させることで、鋼材の強度を向上させます。
浸炭炉には、ガス浸炭焼入れ、ガス浸炭窒化焼入れ、液体浸炭、真空浸炭、浸炭窒化炉などの種類があり、肌焼き鋼、低炭素鋼、快削鋼などの加工に用いられます。
炉の熱源は主にガスや電気が使われていますが、場合によってはよりエコな電気炉に変えることが可能です。熱処理炉メーカーに一度相談してみると良いでしょう。
トップページでは、省エネやSDGsにも力を入れている熱処理炉メーカーを特集しています。行いたい処理や企業の特色から、自社に合ったメーカー選びの参考にしてください。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)