古い熱処理炉の交換は、国が支給する補助金を利用できる場合があります。省エネ効果が高い製品が対象となる「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」について解説します。
エネルギー価格が世界的に上昇している昨今、省エネ設備の導入はより重要性を増しています。そのような社会要請を背景に、省エネ設備を導入するための経費の一部を支援するのが、省エネルギー投資促進支援事業費補助金です。
事業者がエネルギー効率化の計画案を提出し、その提案が採択された場合、高性能な省エネ設備の導入費用を経済産業省資源エネルギー庁が一部補助します。これにより、各業界のエネルギー効率化を支援し、経済的および社会的環境に適応したエネルギー供給体制を築くのが目的です。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の補助対象者は、全業種の法人および個人事業主です。大企業の場合は、省エネ法の定期報告書に基づくクラス分けでSクラス事業者であること、もしくはベンチマーク目標を達成する見込みについて中長期計画書に記載していることが要件となります。
工場内の省エネ化・省電力化に向けて、既存設備をリニューアルする際に活用できるため、工業炉の交換には適する補助金と言えるでしょう。
補助金の交付は1件に限られ、補助額は最大で約260億円(業務管理費を含む)と定められています。具体的な補助額は、経済産業省との調整を経て決定されます。 補助金の支払いは基本的に事業終了後に行われますが、事業終了前の概算払いも可能です。ただし、事前払いには財務省との協議が必要で、事前の承認が得られた場合のみとなります。
支払額の確定は、事業終了後に事業者から提出される実績報告書を基に行われます。また、取引先に対しても現地調査等を行い、支払額を確定します。支払額は、補助対象経費のうち、実際に支出が必要だったと認められる費用の合計となります。したがって全ての支出について、その収支を明らかにした帳簿類及び領収書等の証拠書類が必要となります。
古い熱処理炉は、定期的なメンテナンスを行っていたとしても燃費効率が下がる場合があります。近年の熱処理炉は燃費性能を重視した製品が増えているため、新型の炉に更新すれば省エネ効果を引き出すことが可能です。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金は、省エネ性能が高い特定のユーティリティ設備や生産設備の更新を後押しする制度です。他の補助金と比較して申請手続きが比較的簡単なため、全国的に申請件数が多い補助金となっています。新しい熱処理炉への更新をさらに経済的に進めたい方は、この補助金について詳しく調査してみましょう。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)