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析出硬化処理について

ここでは、析出硬化処理の用途や仕組み、メリット・デメリットについて紹介します。

目次

析出硬化処理とは?

析出硬化処理の仕組み

析出硬化処理とは、金属や合金の表面を硬化させ、内部に固溶した化学成分を析出させることで、小さな粒子を形成し、材料全体の強度を高める方法です。

析出(せきしゅつ)とは、溶液やガス体から固体が分離して現れることです。この仕組みを利用して、金属を所定の温度まで加熱・保持し、冷やして硬質化します。金属の内部に微細な析出物が分散・形成されると、内部から硬質化し、優れた強度を得られます。

この処理は、時間とともに機械的性質が変化する金属に対して適用されます。ベリリウム銅・析出硬化系ステンレス・耐熱鋼ステンレス・インコネル718・アルミニウム合金の一部が代表的な材料です。

析出硬化処理の用途

析出硬化処理は、材料内部に溶け込んだ炭化物を析出させ、硬度を高めるために行われます。

航空宇宙分野に使われる固定部品や回転部品、自動車を構成する部品や試作品、石油・ガス産業の部品などに用いられ、いずれも析出によって強化される金属や合金が析出硬化処理の対象となります。

析出硬化処理のメリット・デメリット

析出硬化処理のメリット

材料の寿命を延ばす効果があるため、損耗が激しい部品に適しています。自動車部品のように、長時間強い負荷がかかる部品には、素材を内部から強化する析出硬化処理が適しています。

析出硬化処理によって通常の部品よりも高い強度の組成を持つ部品が得られるため、自動車部品の強化を通じて車両全体の性能向上に貢献します。電子部品のバネや通信基盤といった精密な部品に使われることが多いベリリウム銅は、析出硬化処理によって金属特性を最大限に引き出すことが可能です。

析出硬化系ステンレスの場合は、焼入れ鋼よりも低温で高硬度を得られるため、焼入れに伴う変形や歪み、寸法変化などのダメージを防ぎます。焼き割れやオーステナイトが残留したために発生する経年変化のリスクも少なく抑えられます。

析出硬化処理のデメリット

析出硬化処理は、部分的にしか硬化できないため、均一な硬度を得られない場合があります。熱処理を十分に行う必要がありますが、処理後に酸化色が発生したり、錆びやすくなったりする可能性があるため、これらのリスクを考慮して処理する必要があります。

析出硬化は「時効硬化」とも呼ばれ、長時間の加熱を行う処理です。効率を求めて材料をまとめて加熱する場合、炉内に過剰に材料を詰め込むと、熱処理が不十分な状態で硬化してしまうリスクがあります。

析出硬化処理以外にも熱処理炉の基礎知識をチェックしよう

析出硬化処理は、析出という現象を利用して金属や合金の内部から強度を確保する熱処理方法です。

品質を安定させるための処理ですが、材料によっては析出硬化以外の熱処理が適していることがあります。事前に加熱する材料の用途や目的、試作品の制作などを考慮し、材料に適した処理方法を選ぶことが重要です。

当サイトでは、熱処理炉に関する基礎知識を紹介しています。次の「あわせてよく読まれている記事」もぜひ参考にしてください。

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(※2 ともに省エネ補助金対象)

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  • ローラーハース式超高温連続熱処理炉 SHRH
  • 急速ガス冷却式真空熱処理炉 QHS/QHN
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※1 参照元:特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/?uri=/c1801/PU/JP-2021-120471/11/ja)※2024年11月8日時点
※2 参照元:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(https://sii.or.jp/koujou05r/system/search)※2024年11月8日時点
※参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)※2024年11月8日時点
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