熱処理炉の買い替えを検討する際、基本構造も確認してみてはいかがでしょうか。ここでは、おさえておきたい基本構造と、加熱方式・冷却方式について紹介します。
熱処理炉を構成しているもののうち、主役となるのが加熱炉と冷却炉です。熱処理炉ではその名の通り熱処理を行うことになるのですが、加熱炉と冷却炉はワンセットとなっています。
鉄や鋼といった金属の性能を引き出すためには熱処理が必要で、そのための加熱を行うのが加熱炉です。熱エネルギーを利用した方法であり、熱を加えられた金属類は加工がしやすくなり、様々なものに生まれ変わります。
加熱炉は単純に加熱するだけでなく、温度調整が自在にできるのが特徴です。
多くの加熱炉に合わせて設置されているのが、冷却機能を持った冷却炉です。水・油・空気などの冷却剤を用いて加熱炉から運び出された製品を冷やします。
加熱方式の中でも代表的なのは、ガスや電気などを使った方法です。
重油やガスを燃やす燃焼式と呼ばれるタイプです。燃焼式の中でも、またいくつかのタイプに分かれます。
例えば、重油や灯油を熱源とする油バーナーや、LPGや都市ガスといったものを熱源とするガスバーナーなどの焼熱式があります。
特に、重油や都市ガスは電気と比較すると安価であることから、たくさんの燃料を必要とする大型加熱炉で使用されることが多いです。
また、ラジアントチューブなどを使用し、関節的に加熱を行う間接加熱方式もあります。こちらの方法では、中が内に燃焼ガスを送る形で炉内を加熱するのが特徴です。
高精度な温度制御をするのに向いているのが、電気を使った加熱方式です。直接加熱方式と間接加熱方式の2種類があります。
例えば、特に代表的なのが誘導加熱であり、外部コイルに電気を流して高周波磁界を発生させることにより処理品に誘導電流を流します。これにより、表面だけの発熱が可能です。
熱処理炉における冷却方式として、水や空気などを使った方法があります。
水冷と呼ばれる方法です。冷却能力が高く、直接冷却と間接冷却の2種類があります。直接冷却は十分に攪拌しないと品質不良が起こりやすくなるため、注意が必要です。
空冷と呼ばれる方法であり、冷却能力は高くありません。
素材によっては空冷だけでは対応できないこともあります。場合によってはファンを使った強制冷却を行うケースもあります。
熱処理炉の基本構造について紹介しました。加熱方式や冷却方式にはそれぞれいくつかの種類があるので、自社に適した熱処理炉を選択したいと考えているのであれば、熱処理炉の基本情報について理解を深めておくと良いでしょう。
以下のページも参考にしてみてください。
2023年5月末時点「日本工業炉協会」の正会員である企業113社の中から熱処理炉を扱っているメーカー58社を抽出。その中でサポート体制について公式サイトに明記されている25社から、令和4年度「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象であった3社を掲載。そのうえで、おこないたい処理方法別に分けて、それぞれの企業の強みや特徴を紹介しています。省エネにつながり、長期的に付き合える熱処理炉メーカー選びの参考にしてください。
※選定基準
2023年5月末時点、「日本工業炉協会」(※2)の正会員一覧に掲載されている企業全113社を調査。すべての企業の中で「熱処理炉」を製造しているメーカーは58社ありました(焼入・焼戻炉(真空炉・浸炭炉含む)、焼きなまし炉(焼鈍炉)、焼きならし炉(焼準炉)、窒化炉を「熱処理炉」と定義しました)。
58社のうち、メンテナンスやアフターフォローをおこなっている旨を公式HPに明記していたメーカーは25社でした。さらに、25社の中から令和4年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業」の対象となっているメーカーのみ3社を選出しています。
パーカー熱処理工業…3社の中で扱っている表面熱処理炉の種類が最多。
東洋炉工業…3社の中で唯一、黒化処理炉を扱っている。
大同特殊鋼…3社の中で企業オリジナルの炉の種類が最多。
※1 参照元:省エネルギーセンター「平成29年度省エネ大賞[省エネ事例部門]受賞内容」PDF(https://www.eccj.or.jp/bigaward/winner17/pdf/e1.pdf)
※2 参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)