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熱処理の空冷について

本記事では、熱処理における空冷の目的や方法、メリット・デメリットについて解説します。

目次

熱処理の空冷とは?

熱処理の空冷の目的

空冷とは、加熱された金属材料を空気中で自然に冷却する方法を指します。金属の硬さや強度、靱性を調整し、特定の機械的特性を引き出すことが目的です。空冷は冷却方法の中で比較的穏やかな方法であり、急激な温度変化による歪みやひび割れの発生が防げます。

空冷は、比較的低温での冷却が必要な部品や、大型部品の冷却に適しています。

熱処理の空冷の方法

空冷では、加熱処理された金属を大気中に置き、自然に冷ます方法で冷却します。焼入れ後の金属を炉から取り出し、大気中で自然に冷却する方法が一般的です。一方で、空気を金属表面に強制的に当てることで冷却を加速させる方法もあります。この方法では、金属の内部まで均等に冷却が行われるように工夫する必要があります。

冷却速度は、材料の形状や大きさ、周囲の温度、空気の流れによって変化します。ゆっくりと冷却する場合、金属の靭性や延性が向上する一方で、速い冷却では硬度が増す傾向があります。さらに、空冷効率を高める手段として、ファンやブロワーを設置することも有効です。

熱処理における空冷の用途

空冷は、主に次のような金属部品や材料に適用されます。

水冷との違い

水冷との違いは、主に冷却速度と与える影響です。空冷は冷却速度が比較的遅いのに対し、水冷は急速に冷却し硬化を促進します。冷却速度が異なるため、適用できる材料も変わります。空冷はゆがみやひび割れを抑えたいときや低炭素鋼に適している一方で、水冷は高炭素鋼や合金鋼など、より高度が必要な場合に適しているでしょう。

熱処理における空冷のメリット・デメリット

空冷のメリット

空冷の大きなメリットは、コストパフォーマンスに優れている点です。必要な設備が少なく、導入コストが少なく済みます。また運用に必要なコストも低いため、エネルギー消費も抑えられるでしょう。特別な設備を必要としないため、シンプルで使いやすく、経験が浅い作業者でも取り扱えます。

また、歪みやひび割れが防げる点もメリットです。ゆっくりと冷却することで、金属内部で発生する熱応力が抑制され、素材の歪みやひび割れが防げるでしょう。

空冷のデメリット

メリットとして挙げられる冷却速度の遅さは、デメリットにもなります。急速に冷却して硬度を高める必要がある場合、空冷では十分な効果が得られないことがあります。また、空気の流れや環境条件によって冷却効率が変化するため、均一な冷却が難しい点もデメリットです。製品ごとに品質のばらつきが生じるおそれがあるため、注意が必要です。

空冷以外にも熱処理の基礎知識をチェックしよう

空冷は、加熱された金属材料を空気中で自然冷却する方法です。水冷と比較されることが多いですが、水冷とは冷却のスピードや必要な設備などが異なります。材料によって適した冷却方法が異なるため、空冷の適用が適切かどうかを十分に確認した上で導入を検討してください。

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※1 参照元:特許情報プラットフォーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/?uri=/c1801/PU/JP-2021-120471/11/ja)※2024年11月8日時点
※2 参照元:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(https://sii.or.jp/koujou05r/system/search)※2024年11月8日時点
※参照元:日本工業炉協会 正会員一覧(https://www.jifma.or.jp/mem-search/official-lineup/)※2024年11月8日時点
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