熱処理により発生する応力の除去
本記事では、熱処理に発生する応力の概要や、残留応力を低減させる方法等について解説します。
熱処理により発生する応力とは?
熱処理によって生じる応力とは
応力とは、外部からの力や熱変化などによって材料の内部に生じる力の分布のことです。物体が変形しようとする際に、抵抗する内部の力として現れます。ただし外部からの力が加わっていない状態でも、加工や熱処理の履歴によって内部に応力が残ることがあり、これを「残留応力」と呼びます。
熱処理によって応力が生まれるメカニズム
熱処理中には、金属内部の部位によって加熱や冷却の速度に差が生じます。この不均一な温度変化により、ある部分が先に膨張または収縮して他の部分との力のバランスが崩れ、その結果、内部に応力が蓄積されるのです。さらに、急冷によるマルテンサイト変態などでも体積が変化し、局所的に引張や圧縮の応力が生まれます。このようなメカニズムが熱処理に起因して残留応力が発生する要因となっています。
残留応力が引き起こすリスク
金属部品に残留応力が存在すると、時間の経過とともに寸法が変化したり、微細なひび割れが生じたりして、破損を招くことがあります。特に、熱処理後に機械加工や溶接によって新たな応力が加わると、内部応力との干渉が生じ、その結果、変形や破壊のリスクが高まります。また、疲労強度の低下やねじれなど、機械的性質の劣化につながるリスクも伴うため、適切な応力管理が重要です。
熱処理により発生する残留応力を低減させる方法
冷却速度の調整
熱処理後の冷却が急すぎると金属内部の温度差が大きくなり、局所的な収縮差によって大きな応力が発生します。冷却速度を適切に制御し、素材全体の温度分布を均一に保つことが、残留応力を抑える上で有効です。例えば、空冷や徐冷を選択することで、内部応力の蓄積を軽減できます。
焼きなまし処理
機械加工や溶接、熱処理などで蓄積された残留応力は、後の変形や割れの原因となることがあります。焼きなましは、金属を加熱して内部応力を低減する処理であり、素材の強度や形状に大きな変化を与えずに応力を緩和します。この方法は特に、精度が求められる部品に有効です。
温度制御とその記録の適切な管理
熱処理の品質を保つには、加熱温度とその変化を正確に制御・記録することが重要です。温度が適切でない場合、応力の発生や処理ムラが生じる可能性があります。各処理段階で温度履歴を把握し、加熱と冷却を安定させることが、残留応力の抑制に有効です。
水素の除去
熱処理中に、水素が金属内部に浸透してしまうことがあります。水素が内部に残ると、材料の性質や耐久性に悪影響を及ぼす可能性があるため、除去する処理が必要です。熱処理前後に脱水素処理を実施することで、熱処理後の残留応力を低減し、材料の品質を維持することに寄与します。
応力除去以外にも熱処理の基礎知識をチェックしよう
応力を除去することは、熱処理におけるリスクの軽減につながります。残留応力の軽減方法を理解することで、より精度の高い熱処理が可能になります。「あわせてよく読まれている記事」では、熱処理に関する情報を発信しています。こちらもぜひご覧ください。
あわせてよく読まれている記事
熱処理炉に求める効果から選ぶ
おすすめの熱処理炉メーカー3選
「日本工業炉協会」の正会員である工業炉メーカー112社のうち、熱処理炉を扱う62社を調査。
その中から、自動車業界、半導体業界、航空宇宙業界に必要な熱処理方法からメーカーを分類し、各社の熱処理炉の強みや特徴を紹介します。熱処理炉に求める効果から、自社に適した熱処理炉を選んでください。
アルミニウムやマグネシウム
の軽さと高強度を
両立させたいなら
北陸テクノ
画像引用元:北陸テクノ公式HP
(https://www.h-techno.com/)
おすすめの理由
アルミ熱処理に
特化した炉を扱う
- 最大85℃の高水温で水冷することでアルミニウムやマグネシウムの歪みを減らしながら強度を高める熱処理が可能
- 冷却水を常にクリーンに保つことで不純物の付着を低減でき、素材本来の特性を保持しつつ品質の高い製品づくりに貢献
対応可能業界の例
- 航空宇宙:AMS 米国航空宇宙規格に対応したT6熱処理炉を展開
- 半導体:半導体製造装置部品のT6熱処理に対応
T6処理ができる熱処理炉例
- アルミニウム、マグネシウムのT6熱処理炉
- アルミニウム、マグネシウムの連続T6熱処理炉
北陸テクノの
熱処理炉の種類や特徴を
公式HPで詳しく見る
北陸テクノに
電話で問い合わせする
合金鋼やステンレスなどの
耐摩耗性や耐疲労性を
高めたいなら
パーカー熱処理工業
※画像引用元:パーカー熱処理工業公式HP
(https://pnk.co.jp/)
おすすめの理由
表面熱処理に
特化した炉を扱う
- 合金鋼やステンレスの窒化技術において特許を取得(※1)しており、耐食性を落とさずに耐疲労性や耐摩耗性を高める熱処理炉がある
- 60年にわたる表面熱処理の経験を基に、省エネと高精度を追求した独自技術の開発を通じて品質向上を支援
対応可能業界の例
- 自動車・EV:自動車部品などの耐摩耗性・耐疲労性を高める表面熱処理に対応
- 半導体・産業機械:半導体設備や産業機械部品など幅広い用途の熱処理に対応
表面処理ができる熱処理炉例
- 真空浸炭炉「ICBP NANO」
- 雰囲気制御式ガス窒化炉PCGNe
など
(※2 ともに省エネ補助金対象)
パーカー熱処理工業の
熱処理炉の種類や特徴を
公式HPで詳しく見る
電話で問い合わせしてみる
耐熱合金やチタンなどの
高温強度や耐食性を
高めたいなら
大同特殊鋼
画像引用元:大同特殊鋼公式HP
(https://www.daido.co.jp/)
おすすめの理由
耐熱処理に
特化した炉を扱う
- 航空宇宙業界などで使われる非鉄系金属に対して2000℃レベルの高温での真空熱処理ができる熱処理炉がある
- 独自の研究や開発を行っており、高温化で利用される金属に対する知見があることから高温強度や耐食性を高めるための技術提供ができる
対応可能業界の例
- 半導体・電子部品:パワー半導体などに用いられる材料の超高温熱処理に対応
- 自動車・EV:モーターや電池関連など、自動車の電動化に関わる材料・部品の熱処理に対応
耐熱処理ができる熱処理炉例
- ローラーハース式超高温連続熱処理炉 SHRH
- 急速ガス冷却式真空熱処理炉 QHS/QHN
など
大同特殊鋼の
熱処理炉の種類や特徴を
公式HPで詳しく見る
大同特殊鋼に
電話で問い合わせする