熱処理炉を交換する前に知っておきたい基本情報をまとめました。交換目安や依頼先、熱処理炉の交換にあたって知っておきたいことについて解説しているので、熱処理炉選定の参考にしてください。
熱処理炉は工業炉の種類の一つ。熱処理炉に限定した交換目安に関するデータはありませんでしたが、工業炉の交換目安に関する資料を調査しました。
平成26年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(工業炉等における省エネルギー技術に関する実態調査)報告書のアンケート調査によると、炉種別の平均更新年数は28.4年と推計されています。中には40年で更新している炉もありますが、燃費が悪くなったり性能が落ちたりすることで安全面に不安が出てくるのを考慮すると、30年を目安に交換することが望ましいといえるでしょう。
熱処理炉はほとんどの場合、一度稼働すると少なくとも10年は使い続けることになります。正しいメンテンスを受け、メーカーによる交換についてのアドバイスをもらうことが大切です。
熱処理炉を交換する場合は、通常使用してきた炉のメーカーに問い合わせするのが一般的です。ただし、省エネや環境への配慮の観点から熱源を電気に変えたり、新製品を作れる炉を新たに導入する場合は、同じメーカーでは対応しきれないことがあります。
今から熱処理炉を新たに導入する場合、約10~30年程度は稼働を続けるはず。乗り換えるなら30年以上の歴史や経験に裏打ちされたメーカーやサポート体制が整っているメーカーを選ぶことをおすすめします。
また、日本工業炉協会の正会員であることは、信頼できるメーカーであることがわかる指標になりえます。もちろん、自社の商材にあった炉を提供しているかどうかも確認し、しっかりと吟味して導入しましょう。
当サイトでは日本工業炉協会の正会員である熱処理炉メーカーの中から、サポートやメンテナンスが充実している熱処理炉メーカー3社を厳選しています。熱処理炉の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
頼れるサポート体制!
省エネも叶える熱処理炉メーカー
3選はこちら
工業炉全体の傾向としても熱処理炉においても省エネタイプが主流になってきています。2021(令和3)年度からは「先進的省エネルギー投資促進支援事業」が開始され、一部の熱処理炉や熱処理設備も対象となりました。対象の熱処理炉であれば補助金が支給されることがあるので、導入のコストを削減したい方は、事前にチェックしておきましょう。ここでは、省エネルギー投資促進支援事業費補助金について詳しく解説しています。
なお、当サイトで選出したおすすめ熱処理炉メーカー3社は、いずれも補助金の対象のメーカーです。購入したい熱処理炉や熱処理設備が補助金の対象になるかチェックしておきましょう。
熱処理炉はメンテナンスが必須の設備です。1年に1~2回の定期点検はもちろん、危険な症状がないか日々チェックすることが大切。熱処理炉のメンテナンスを怠ることで、大事故につながることもあります。
熱処理炉によっては導入した企業側でメンテナンスを実施するケースもあれば、熱処理メーカー側がアフターフォローの一環としてメンテナンスをおこなうケースもあります。ここでは、熱処理炉のメンテナンスについて解説しています。
熱処理炉をはじめとする工業炉から排出されるCO2も、問題視されています。そのため、環境負荷を低減する設備に変える企業も出てきているのが事実。CO2の削減につながる熱処理炉を選ぶことは、地球温暖化を食い止め、持続可能な社会を目指すためにも重要です。
ここでは、熱処理炉をはじめ、工業炉が地球温暖化に与える影響と温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラルに必要な電気炉について解説。ぜひチェックしてください。
熱処理炉は200℃以上の高温になる特殊な環境であり、部品が劣化してくると温度を保てなくなったり異音が出たりするおそれがあります。トラブルを防ぐためにも、定期的な点検とメンテナンスが必要であり、古くなった部品は交換が必要です。炉本体も約30年の寿命となっているため、タイミングをみて交換を行ってください。
ここでは、熱処理炉の部品交換について、依頼するタイミングや交換が必要な部品について紹介していますので、ぜひチェックしてください。
熱処理炉の基本構造として、加熱炉と冷却炉の2つが挙げられます。多くの熱処理炉にはこれらがワンセットで組み込まれており、金属の性能を引き出すために加熱炉で熱を加えたあと、冷却炉に運ばれて冷やされます。
加熱方式と冷却方法にはそれぞれいくつかの方式があり、どういった形で加熱・冷却されるのかによって適した材料が変わるため、よく確認が必要です。熱処理炉の基本構造や、熱処理炉における加熱方式・冷却方式を解説します。
熱処理炉には、バッチ式と連続式があります。バッチ式は主に多品種少量に向いている方法です。大量生産を行うのには適していないものの、毎回プロセス条件を変更して過熱することも可能です。連続式は連続して製品の加熱が可能であり、大量生産に向いています。その一方で設備の初期費用がかかるほか、多品種少量の生産には向いていません。
ここでは、バッチ式と連続式の特徴や、向いているもの、どのような種類があるかなどを紹介します。
熱処理炉の中には非常に大きなものもある一方、卓上でも設置できるようなコンパクトなものもあります。十分な設置スペースが取れない場合や、複数の使用する場所に持ち運べるような軽量タイプを選択したいと考えているのであれば、小型の熱処理炉を検討してみるのも良いでしょう。
加熱炉ではプッシャー式が採用されているケースが多いです。ここでは、小型の熱処理炉について、特徴や実際にどのような製品事例があるのかなどを紹介します。
熱処理炉を使用する上で、重要になるのが温度管理です。適切な温度管理を行うことは、加工の精度に影響します。適切な温度管理ができていないと目的としている結果が得られません。また、熱処理炉内の温度ムラは仕上がりのムラにもつながります。温度管理システムにはいくつか種類があり、どのシステムが搭載されているかによって温度管理の精度が変わるため、慎重に検討が必要です。
ここでは、熱処理炉における温度管理の重要性を解説します。
熱処理炉に関連する業務には、様々な危険が潜んでいます。そこで、現場で働く従業員を守るため、リスクアセスメントに取り組んでいかなければなりません。リスクアセスメントを実施することにより、労働災害の発生を抑えることが可能です。現場で考えられる危険性または有害性を特定し、リスクの見積もりを行った上でリスク軽減のための対策をとりましょう。
熱処理炉のリスクアセスメントの目的や、どのように進めていけば良いかを解説します。
熱処理炉に関連する作業の中には危険性が高いものもあるため、事前に研修を行い、現場の安全性を高めておいた方が良いでしょう。研修によって、熱処理炉に関しておさえておきたい基本的な情報はもちろんのこと、効率的な作業につなげる方法や、考えられる事故・危険性などが学べます。従業員のスキルアップのためにも実践してみると良いでしょう。
ここでは、熱処理炉に関する研修の必要性や、どのような研修が行われているのかなどを紹介します。
ハイブリッド型の熱処理炉の中には、2つの熱源や仕組みなどを組み合わせたハイブリッド型のものがあります。熱源として採用されることが多いのは、ガスと電気です。工程ごとに適した熱源を使用するものや、任意に切り替えられるものもあります。熱源が1つのものと比較すると省エネ効果が高いので、処理に関するコストを抑えることにもつながるでしょう。
ここでは、ハイブリッド型の熱処理炉の特徴や、どのような製品事例があるのか紹介します。
どの熱処理炉を導入しようか悩んでいるのであれば、開催される展示会を調べて参加してみてはいかがでしょうか。それほど頻繁に行われているものではありませんが、日本でも熱処理炉に関係した展示会が開催されることがあります。展示会に参加することによって気になる熱処理炉を探したり、担当者からわかりやすい説明を受けられたりするのが魅力です。
熱処理炉の展示会に参加するメリットや、実際にどういった展示会の事例があるのか紹介します。
熱処理炉を導入する際に考えておきたいのが、省エネ対策に関することです。熱処理炉の稼働に必要なコスト高が高くついてしまい、悩みに繋がっているケースは少なくありません。省エネ対策に取り組むことにより、コスト削減が可能です。また、熱処理炉を稼働させると二酸化炭素や有害物質が発生しますが、省エネ対策に取り組むことによってこれらを抑えることができます。
熱処理炉の省エネ対策が必要な理由や、実際の事例を紹介します。
今までは、熱処理炉の稼働や作業の判断は熟練した作業スタッフが担当していました。しかし人手不足や熟練者の退職といった課題が深刻化し、現在では特定のプロセスを自動化する方法が注目されています。熱処理予約・温度分布の制御・ワークの供出から払出といった部分を自動化することで、人手のない状態でも安定的に稼働させられます。
ここでは、熱処理炉の自動化にどのようなメリットが期待できるのか、実際の事例とともに紹介します。
熱処理炉は1000℃を超える高温にも耐えられるように、断熱性能の高い素材が採用されています。定番の断熱素材であるレンガに加えて、グラスウールやロックウール、スピネル質セラミックスなどさまざまな素材が活用されています。炉の特徴や大きさに合わせて適した断熱素材を使用することで、放射や伝導といった現象に耐えられる熱処理工程が実現します。
どのような目的で断熱材が採用されているのか、素材の種類や特徴と合わせて紹介します。
熱処理炉は航空宇宙・自動車産業・エレクトロニクス・半導体などさまざまな産業分野の製品づくりに用いられており、省力化やヒューマンエラー防止のためにデジタル化が推奨されています。AIやIoTを駆使して履歴を管理したり、トレーサビリティを確保したりといった方法で無駄をなくし、熱処理工程のスマート化にも成功し、今後さらに熱処理炉のデジタル化が進んでいくとみられます。
ここでは、熱処理炉のデジタル化について紹介しています。
中古の熱処理炉は新品で探すよりもラインナップが豊富で、さらにコストを抑えながらスピーディーに導入できる強みがあります。もし自社に適した熱処理炉が見つかれば、予算内で良いものを選びやすくなるかもしれません。しかし中古の熱処理炉を選ぶことには、メリットだけでなくデメリットが感じられることもあるでしょう。
ここでは、中古の熱処理炉についてメリット・デメリットとともに、実際に販売している業者の具体例をご紹介します。
熱処理炉は高温になるため、火災事故が起きるリスクが高くなります。実際に冷却水による混入で油が飛散して火災が起きたり、搬送装置の故障のため製品の熱で高温になった油に着火した事例などがありました。またスラッジスケールの塊が落下したことにより火災が起きた例も。そのため清掃の際にも細心の注意が必要となります。
ここでは熱処理炉で実際に起きた火災事例をご紹介しますので、導入した跡の火災予防のための参考にしてください。
消防法と大気汚染防止法によって、一定の規模以上の設備であれば届出を提出しなければならないと決められています。そこで熱処理炉を導入するにあたって知っておきたいのが、届出の条件についてです。火格子面積や羽口面断面積、燃焼能力、変圧器定格容量などについて条件が定められています。
そこでここでは熱処理炉導入の前にぜひ知っておきたい、届出の条件と必要性について解説します。
熱処理炉内の温度は、常に一定であるとは限りません。温度管理を左右する要因のひとつが、上昇気流です。熱処理炉内で温められた空気は上昇し、隙間から漏れていきます。失われた空気を炉内に補うように外部から冷たい空気が侵入すると、炉内の上下で温度のバラつきが生じてしまいます。
そこで熱処理炉の上昇気流を抑制・循環させる方法を解説していますので、熱処理炉の導入前に理解しておきましょう。
雰囲気ガスは、熱処理炉で加工する材料の酸化・脱炭を防ぐ効果を期待できます。ガスの種類によっては材料の特性を向上させる働きもあるため、熱処理炉による加工において雰囲気ガスは非常に重要です。
そして熱処理で加工する素材やコストなどによって、適した雰囲気ガスの種類を選ばなくてはなりません。そこで熱処理炉に使用される雰囲気ガスの種類をご紹介します。
熱処理を行う工場や実験室などに導入されるチャンバー型の熱処理炉。デスクに置けるコンパクトなサイズ感と高温加工ができる機能性を兼ね備えています。「加熱する材料はそれほど大きくない」「設置するスペースが限られているので、できるだけコンパクトなモデルがいい」といった要望がある場合に、チャンバー型の熱処理炉が適しています。
化石燃料の代替燃料として注目を集めている水素を使用し、二酸化炭素を排出しない水素バーナー。昨今の地球環境を考えた動きのなかで、水素バーナーを導入する企業が増えています。
かつての水素バーナーには、窒素酸化物の発生や安全性などの課題がありました。しかし昨今では開発が進み、都市ガスバーナーより窒素酸化物が少なく、さらにバーナー内部の構造を工夫して逆火を防止できる水素バーナーが発売されています。
冷却水とは、その名前の通り冷却に用いる水で、熱処理炉を効率よく稼働させるために重要な役割を担っています。冷却水は、流量の管理が非常に重要です。流量が足りない場合には、熱処理炉が適切に冷却されず、炉の破損や加工物の品質低下に繋がります。
反対に冷却水が多すぎる場合には、過冷却を起こしてしまいます。冷却水にはスケール障害という問題もあるため、定期的なメンテナンスが欠かせません。適切な管理方法を把握したうえで、冷却水を正しく使いましょう。
日本国内にある3.7万基の工業炉からは、1.5億トンの二酸化炭素が排出されています。(※2019年時点)。これは、日本国内における二酸化炭素排出量全体の13.5%を占める数値です。
工業炉からの二酸化炭素排出量を抑えるために注目されているのが、クリーンエネルギーを活用した工業炉です。水素やアンモニアなどを使用した工業炉により、地球環境に配慮した持続可能な工業生産が求められています。
熱処理炉は金属を加工する設備ですが、無資格者でも業務に携わることができます。一方で、熱処理炉を使って作る製品の品質向上や社内における監督・指導を担う場合は、国家資格である「金属熱処理技能士」が活用できます。
金属熱処理技能士は2級・1級・特級の3段階に分けられ、金属加工に必要な知識と技術が問われます。就職や転職の際に有資格者としてアピールができ、高位の資格に挑戦するほど専門性が身につくメリットがあります。
熱処理炉は高熱を利用する設備のため、炉内の温度は1000度を超えることもあります。余分な熱は排熱として外に放出されますが、この排熱にも高い熱エネルギーがあることから、回収・再利用に注目が集まっています。熱エネルギーとして循環させたり、熱交換器を使って予熱に回したりする方法で、排熱の力を利用する仕組みです。
このシステムは、熱効率の向上と熱処理炉を動かすエネルギーコストの低減、二酸化炭素の削減にも役立てられています。
熱処理炉には電気を熱源とする電気炉と、ガスなどを熱源とする燃焼炉があります。それぞれに特徴があり、炉に適したワークや材料が異なるため、ものづくりの現場では何度か試験を実施して結果を検証し、本番の加工・製作に臨みます。
「燃焼試験」「溶融試験」のように物質変化を見るための試験や、高温状態で発生するガスの分析を行う「発生ガス分析試験」などはいずれも熱処理炉で行われる試験です。炉と試料の相性や試験の目的から、適切な試験方法を選択しましょう。
熱処理加工は、我々の日常のなかにある数多くの部品に関わっています。自動車部品もそのひとつで、自動車に使われるボディ材、ギア、エンジンやトランスミッションのパーツ類にも熱処理がおこなわれています。
熱処理炉をする理由は、素材の摩耗性・耐疲労性向上です。自動車に使われる部品は、安全かつ強固でなければなりません。そうした自動車に求められる性質の実現を担っているのが熱処理です。
昨今では、地球環境に配慮した省エネ熱処理炉も誕生しており、化石燃料を使用せず稼働できるものもあります。
ガラスの製造に欠かせない熱処理炉。身近なものでいえば、窓ガラスやガラスの小物、また、ガラスを使った工芸品の成形にも使用されています。
ガラスの熱処理炉はバリエーションが豊富なのが特徴です。ガスバーナ式や電気式、また、大がかりなモデルからコンパクトな加熱装置まで幅広く、用途や目的に応じて選択可能です。
小型のモデルであれば簡単に導入できそうですが、導入の際には、断熱構造や燃焼安全制御などの安全面に注意が必要です。専門家や有識者を交えてよく検討するか、専門的に扱っている企業に相談するのがおすすめです。
クリーンな発電として太陽光パネルは注目されていますが、太陽光パネルには寿命があり、大量の廃棄が問題になると懸念されています。それに備えて技術開発は進んでおり、現在では、太陽光パネルの大部分がリサイクル可能になりました。
既存の太陽光パネルが寿命をむかえたら、熱処理をして分解し、さらに熱処理炉で太陽光パネルをあらたに製造する。太陽光パネルにおいて熱処理炉は、重要な役割を担っています。
熱処理炉による太陽光パネルの製造・リサイクルについて
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工業炉の一種である熱処理炉は、熱源や操業方式によって複数のタイプに分かれています。なかでもバッチ式と呼ばれる操業方式には、箱型やピット型といった用途に応じたタイプがあります。
箱型の熱処理炉はボックス型の形状で、マッフルとも呼ばれています。部品や材料の焼入れ・焼戻し・焼きなましなどに使われます。燃焼や電気による熱源で作動し、大型タイプのものもあります。安全装置や雰囲気制御に対応したものなど、機能も豊富です。
熱処理炉は工業炉の一種で、操業方式として「バッチ式」と「連続式」があります。バッチ式には箱型やベル型などがあり、ベル型の熱処理炉は外側と内側に蓋がついています。
焼きなましの工程に用いられることが多く、蓋がついているため気密性の高さが特徴。熱効率が高く、熱損失を抑えられる構造です。
気密性の高さに加えて、温度分布の抑制や省エネ効果を高めたものもあり、コストパフォーマンスにすぐれた製品が揃っています。
熱処理炉のうち、バッチ式の操業方式が採用されているピット型熱処理炉は、地下に凹型の炉を造ってワークを装入し、加熱する工業炉です。
ピットを大きく造ることで長物や大型の部品にも対応できます。製品によってメンテナンスコストの削減が可能なものや環境基準を満たしたものもあり、ニーズに合う高機能な製品も選べます。
バッチ式熱処理炉には箱型やベル型などもありますが、通常よりも大型のワークを扱う場合はピット型が適しています。
トレイプッシャー型は、連続式熱処理炉の一つです。トレイの上に加熱する物を載せて搬送し、押し引き(プッシュ)によって熱を加える仕組みです。
炭素などの脱脂、機械や自動車部品の焼きなましに使われることが多く、大型の製品に適しています。トレイに載せたまま一定の間隔で搬送するため、炉内温度や雰囲気が安定していればムラなく均一に加熱できます。
電力が削減できる熱処理炉なども選べます。加熱したい物の種類などに応じて適切な炉を選ぶことが大切です。
ローラハース型は、連続式熱処理炉の一つです。炉内に設置されているローラー(ハース)の上に加熱する物を載せて、搬送しながら加熱する仕組みとなります。
全方位からの加熱冷却が行えることから、高い処理効率が特徴です。自動車部品や金属部品の焼入れ・焼戻しといった熱処理に多く利用されています。無駄な処理時間を減らし、省エネルギーにも貢献します。
リードタイムが短縮できるものや2000℃レベルの高温環境で加熱できる熱処理炉も選べます。
メッシュベルト型は、連続式熱処理炉の一つです。金属製の耐熱メッシュベルトの上に加熱する物を載せて搬送しながら、加熱を行う仕組みです。
蛇行やズレが少なく安定し、ロー付けやはんだ付け、電極乾燥といったさまざまな目的に対応。コンパクトタイプのメッシュベルト型熱処理炉は省スペースで加熱処理が行えます。
金属製のメッシュベルトは安定性にすぐれ、搬送中に対象物が落下する心配がないため、均一に熱を加えられます。温度分布や安定性にすぐれた機種も選べます。
シェーカーハース型は、連続式熱処理炉の一種です。高温で均一な加熱処理が可能な熱処理炉で、加熱ムラを避けたい金属部品に適しています。床面にボルトやバネなどの対象物を載せて水平移動させながら、慣性の力で前方へ送る仕組みです。
製品によっては炉内での加熱移動中にゾーンごとの温度変化を与え、精密な加熱制御が可能なタイプもあります。ワークの酸化や脱炭を防ぐ無酸化雰囲気の生成や、軽量な素材を使用して蓄熱量を減らす製品などもあります。
回転レトルト型の熱処理炉は、連続式に分類される工業炉です。 小物の焼入れ・焼戻しなどに用いられ、炉心管という円筒に原料または製品を入れ、円筒ごと回転させながら加熱処理を行います。
回転運動によって均一な仕上がりが期待でき、製品ごとの焼きムラが生じにくいです。ヒートパターンの設定が可能な製品もあり、加熱処理中の化学反応を防ぐため、耐食性の高い素材も選べます。
メッシュベルトなどでは難しい粉体の処理にも適した熱処理炉です。
カーボンニュートラル型の熱処理炉とは、二酸化炭素を排出しない熱処理炉のことです。燃焼炉から電気炉への変更、天然ガスの代わりにアンモニアや水素などのゼロエミッション燃料を使う方法が挙げられます。
二酸化炭素を排出しないことにより、環境負荷を軽減する効果が期待できますが、事業者にとってはコストや効率の問題があるため、カーボンニュートラル型への転換は容易ではないという声もあります。そのため、ゼロエミッション燃料の導入と安定稼働が今後の課題です。
真空熱処理とは、酸素のない真空状態で材料を加熱する方法です。酸素が少ないため酸化が防げるほか、脱炭も起きにくいメリットがあります。真空焼入れ・真空焼戻しといったさまざまな熱処理方法に対応している点も特徴です。
真空熱処理は、炉内を真空状態にするための装置や設備が必要です。通常の熱処理とは異なるためコストがかかる点はデメリットですが、材料に対して均一な処理や汚染予防の効果が期待でき、光輝性も得られます。
窒化処理とは、窒素を金属製品の表面に浸透させて加熱し、硬化させる方法です。窒素を内部に浸透させることにより、耐久性・耐腐食性が求められる部品に適しています。
窒化処理では、アンモニアガスのように窒素を含む雰囲気の中で加熱していきます。ガス窒化やプラズマ窒化など、いくつかの方法があり用途や加工する材料の特性に応じて処理方法を選びましょう。硬化した金属面の耐摩耗性や疲労強度が高まるため、製品の長寿命化にも貢献します。
浸炭熱処理とは、浸炭性ガス雰囲気の中で金属製品を加熱し、表面に炭素を浸透させながら硬化して耐摩耗性や疲労強度を高める方法です。窒化処理よりも高い硬度が得られるほか、調整によって特定の硬さに仕上げられる点がメリットです。
過剰浸炭と呼ばれる処理不良には注意が必要ですが、適切に浸炭処理を行えば金属の性質が強化され、製品の強度が向上します。浸炭は表面処理であるため、金属内部の炭素量は少ない状態が維持され、靭性が保たれます。
固溶化熱処理とは、合金のように2種類以上の元素が含まれている金属に行われる熱処理方法です。合金の固有温度まで加熱後に急冷することで、合金元素が析出せず、内部に溶け込んだ状態で硬化させることができます。内部の結晶構造が安定するため、錆びや破断といったトラブルのリスクを減らすことができます。
オーステナイトステンレス鋼のように内部構造が不安定化する可能性のある金属については、固溶化熱処理を行うことで、耐食性を向上させることができます。
高周波焼入れは、鋼材などの金属素材の品質を向上させるために行われる熱処理方法です。材料に近接したコイルに高周波誘導電流を流すと、ジュール熱が発生し、短時間で高温環境を作り出して局部加熱を行うことができます。金属の表面だけを高温にさらすので、内部は元の状態に保たれ、靭性が維持されます。
高周波の力を利用するので、短時間のうちに材料を硬質化することができます。予熱の必要がないため、エネルギーコストを削減できる方法です。
析出硬化処理とは、金属や合金の中に含まれる化学成分が一定の温度環境のもとで析出し、析出物が分散・形成することで内部から素材の強度を高める熱処理です。ベリリウム銅や析出硬化系ステンレスなど特定の材料に適した方法です。
材料自体の長寿命化に貢献するため、自動車部品のように損耗の激しい部品に対して行われる処理方法です。ただし、部分的にしか硬質化できないため、均一な硬度を求める場合は、他の処理方法の併用を検討する必要があります。
電子ビーム焼入れは、加速した電子を金属の表面に照射し、その衝突発生した熱で金属を局所的に加熱し、硬化させる技術のことです。自動車部品や医療機器など精度の高さが必要な部品にも適用されており、熱効率が高く、迅速かつ正確な熱処理が可能です。
ただし、電子ビーム装置の導入には高額な設備コストが必要である点や、適用できる材料が限られている点がデメリットです。そのため、導入時には十分に検討する必要があります。ここでは、電子ビーム焼入れの仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説します。
熱処理工程の効率化、品質向上、コスト削減など、熱処理におけるAIの活用にはさまざまなメリットがあります。注意が必要な点もありますが、効率的かつ精度の高い熱処理を行うためには、AIの活用が欠かせないと考えられます。
今後さらにAI技術が進化し、熱処理プロセスの進歩が加速することが期待できるでしょう。
加熱された金属材料を空気中で自然冷却する方法です。この方法では風を利用し、冷却方法の中でも比較的穏やかであるため、急激な温度変化による歪みやひび割れを抑えられる点がメリットです。
ただし、急速な冷却が必要な素材には適していないため、適用の可否を十分に確認した上で導入を検討する必要があります。
ソルト焼入れでは、金属部品の熱処理後に塩化カリウムや塩化ナトリウムなどの塩類を高温で溶融させた塩浴(ソルトバス)の中で冷却します。均一な熱伝達と冷却が可能なため、硬度ムラや歪み、焼割れのリスクを低減できる熱処理方法です。熱処理性能の向上や酸化防止などの効果が期待できる点がメリットですが、コスト面のデメリットがあるため、しっかりと検討する必要があるでしょう。
ここでは、ソルト焼入れの用途や仕組み、メリット・デメリットについて解説します。
油冷では、金属部品をの熱処理後に油の中で冷却します。自動車部品、機械部品、工具など、硬度と靭性のバランスが求められる製品の熱処理に広く用いられている冷却方法です。金属部品の内部応力や歪み、亀裂の発生リスクを低減し、均一な硬化が叶えられるものの、使用する油が可燃性であるため、火災のリスクが伴うデメリットがあります。
ここでは、熱処理の油冷について、目的や用途、メリットやデメリットなどを解説します。
水冷は、金属部品を急速に冷却することで求める硬度や機械的性質を得られる冷却方法です。自動車部品、工具、機械部品など、硬度や耐摩耗性が求められる製品の熱処理に広く適用されています。金属部品の強度向上や生産性の向上に有効な手法ですが、内部応力の増加や亀裂のリスクといったデメリットも存在します。部品の材質や形状、求められる特性に応じて、適した冷却方法を選択することが重要です。
ここでは、熱処理の水冷について、目的や用途、メリットやデメリットなどを解説します。
熱処理における品質管理は、鉄鋼の強度を維持し、製品の品質を高めることを目的としています。計画・実施・評価と3つの段階に分けて品質管理プロセスを設定し、忠実に実行することが重要です。実施においては、材料の選定や温度管理、冷却速度の管理など、様々なチェックポイントを意識しながら行う必要があります。また、品質管理を担当する作業員に対しては、継続的な教育を実施し、十分な技術と知識を有する人材によって対応することが求められます。
熱処理を実施するにあたり、脱炭層・酸化・割れ・変形といったトラブルが発生するおそれがあります。それぞれに予防策があり、例えば脱炭の場合、炉内のCO2、CO濃度を分析・制御することが有効です。酸化はO2や水蒸気、CO2などの雰囲気を除去することでトラブルを防げます。各トラブルの予防策を理解し、実践することで、熱処理工程の安定化が期待されます。
熱処理の「直接加熱」と「間接加熱」は、いずれも燃焼炉と電気炉で行えます。直接加熱は熱の伝達効率に優れている点が利点とされていますが、使用できる対象物の温度制御が難しいというデメリットがあります。間接加熱は炉内の温度制御をしやすい反面、対象物への熱伝達効率が劣る点が課題とされています。いずれの場合も、対象物の特性や作業環境を踏まえ、適切な熱処理方法を検討することが求められます。
サブゼロ処理(深冷処理)は、焼入れ後の鋼材を0℃以下に冷却する熱処理方法です。残留オーステナイトを安定したマルテンサイトに変化させることで、硬度の向上や寸法の安定化、耐摩耗性の強化、経年劣化の防止など、様々な効果を得られます。高級刃物や金型など、寸法精度や耐久性が求められる製品において、サブゼロ処理は重要な工程です。材料に適した冷却方法を選ばないと十分な効果が得られないほか、様々なリスクが高まります。素材や目的に応じた冷却方法の選択が重要です。
光輝熱処理は、水素などの還元性ガスを用いて金属を加熱処理することで、表面に酸化皮膜が形成されるのを防ぐ技術です。処理後の金属は美しい光沢を保ち、追加の研磨や酸洗いといった後処理が不要になるため、作業工程の効率化が図れます。見た目や機能性が求められるステンレス鋼やニッケル系合金によく用いられており、精密部品や装飾用部材の製造に適した技術です。連続処理炉を活用することで、大量生産や自動化にも対応できます。
オーステナイトは、鉄鋼材料の性質を調整・強化するために熱処理工程で活用される技術です。焼入れでは、オーステナイト状態から急冷することで高硬度を持つマルテンサイトを得られ、耐摩耗性を高め、焼ならしでは比較的速やかに冷却することで、組織の均一化が図られます。また、焼なまし処理で緩やかに冷却して素材を軟化させると、加工しやすい状態になります。オーステナイトの制御や冷却工程を工夫することで、材料の性質を目的に応じて変化させることが可能です。
「日本工業炉協会」の正会員である工業炉メーカー112社のうち、熱処理炉を扱う62社を調査。
その中から、自動車業界、半導体業界、航空宇宙業界に必要な熱処理方法からメーカーを分類し、各社の熱処理炉の強みや特徴を紹介します。熱処理炉に求める効果から、自社に適した熱処理炉を選んでください。