熱処理炉の雰囲気ガスについて
日常生活でよく使われる「雰囲気」という言葉は、熱処理炉に関する用語としても使われます。雰囲気ガスは、熱処理炉を効率よく高い精度で運用するために不可欠な要素です。ここでは、熱処理炉で雰囲気ガスを使う理由と種類についてまとめました。
熱処理炉の雰囲気ガスとは?
定義
雰囲気ガスとは、熱処理炉を稼働させるときに送り込まれるガスです。英語では"Atmospheric Gas"と呼ばれています。
主な用途
熱処理炉における雰囲気ガスの用途は、主に2つあります。
まずは材料の酸化・脱炭予防です。たとえば鋼を例に挙げてみましょう。鋼を加熱した場合には、空気中の酸素と鋼の炭素が結合。すると鋼の持っていた炭素が減少(脱炭)し、必要以上の摩耗や破損につながることもあります。こうしたトラブルを防ぐために、雰囲気ガスが役に立ちます。
上記のトラブル防止だけでなく、雰囲気ガスは材料の持つ特性を更に引き上げることも可能です。例えば表面の強度を向上させるために、雰囲気ガスが活用されます。雰囲気ガスにはいくつかの種類があり、加工する材料やコストなどの観点から選ばれます。
熱処理炉に使用される雰囲気ガスの種類
純粋なガス
雰囲気ガスとして、以下の6種類の純粋なガスが使用されます。
- 不活性ガス(アルゴン、ヘリウム)
- 還元性ガス(水素、一酸化炭素、炭化水素など)
- 酸化性ガス(酸素、水蒸気など)
- 脱炭性ガス(酸化性ガス)
- 浸炭性ガス(一酸化炭素、炭化水素、エタノールなど)
- 窒化性ガス(アンモニア)
変成ガス
純粋なガスは高価なため、長期的に利用し続けるとコストがかかります。そのため雰囲気ガスに使われる気体と空気を合わせた変成ガスも利用されています。
- DXガス
炭化水素ガス(プロパン、ブタンガスなど)と空気を混合させた変成ガスです。用途としては、低炭素鋼やアルミなどの光輝焼なましに適しています。
- AXガス
露点マイナス40℃以下の変性ガスで、アンモニアを用いて生成されます。ほとんどの鋼の光輝加熱に適しており、用途は広いです。
- NXガス
ブタンやプロパンと空気を混合・燃焼して加工された変性ガスです。AXガスと同じように光輝加熱に適していますが、ステンレス鋼には向いていません。
- RXガス
浸炭や無脱炭焼きなましなどに使われる変成ガスです。メタンやブタンなどのガスと高温触媒から生成されます。
雰囲気ガス以外にも熱処理炉の基礎知識をチェックしよう
材料の酸化・脱炭防止や特性向上などに役立つ雰囲気ガス。熱処理炉の運用において、必ず知っておきたいポイントです。
当サイトでは熱処理炉を導入するために知っておきたい役立つ情報を掲載しています。導入前に、以下のページもぜひ参考にしてください。
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