熱処理のサブゼロ処理について
熱処理のサブゼロ処理は、対象物の硬度を均等にし、品質を高めるために重要な工程です。本記事では、熱処理のサブゼロ処理の目的や、メリット・デメリット、処理を行う上での注意点等について解説します。
熱処理のサブゼロ処理とは?
サブゼロ処理の目的
焼入れ後の鋼材には、未変態の残留オーステナイトが存在し、これが寸法変化や硬度低下の原因となります。サブゼロ処理により、これをマルテンサイトに変態させ、組織を安定化させることが目的です。また、材料の硬度を上げる、寸法を一定にすることや、硬度を均一にして耐摩耗性を高める、経年劣化を防ぐなどの目的でサブゼロ処理を行う事もあります。
サブゼロ処理のメリット
- 材料を安定させる
 残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させることで、組織を均一で安定した状態になります。
- 耐摩耗性を高める
 サブゼロ処理によって硬度が向上し、耐摩耗性が高まります。これにより、工具や金型などの寿命が延びる点がメリットです。また、長期間使用する部品での組織変化を抑制し、性能を維持します。
- 寸法安定性の向上
 オーステナイトが遅れてマルテンサイトに変態するのを防ぎ、寸法を安定させます。
- 硬度を高める
 サブゼロ処理によってマルテンサイトの割合が増え、材料の硬度が高まります。
サブゼロ処理のデメリット
- 錆びが生じやすくなる
 低温処理によって材料が変化することで、鋼材の耐食性が下がり錆びが生じやすくなる場合があります。耐食性が求められるステンレス鋼等を処理する場合は、慎重な選定が重要です。
- 処理時の寸法変化が大きい
 残留オーステナイトがマルテンサイトに変態する際に、寸法変化が大きくなる場合があります。寸法変化を考慮した温度設定や後加工が必要です。
熱処理のサブゼロ処理に関する注意点
冷却タイミングに気をつける
サブゼロ処理は、焼入れ直後に行うことで効果を発揮する処理方法です。時間が経過してから処理を行うと、残留オーステナイトの変化が進んでしまいます。目的とする硬度や寸法安定性が得られにくくなるため、処理のタイミングが非常に重要です。
冷却材の選定や温度管理が重要
サブゼロ処理では、ドライアイスや炭酸ガス、液体窒素などの冷却材を使い、温度を-80℃から-196℃まで制御します。材料に適した冷却方法を選ばないと、処理の効果が得られないだけでなく、ワークのひび割れや変形のリスクも高まるため、慎重な対応が必要です。素材や目的に応じて、適切な冷却手法を選定することが求められます。
サブゼロ処理以外にも熱処理炉や熱処理の基礎知識をチェックしよう
サブゼロ処理は、材料の硬度を高めて経年劣化を防ぐために効果的な処理方法です。メリット・デメリットを理解し、注意点を意識することで、より高い効果を得られます。
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